セミナーレポート

デジタルで変わる。花王の“顧客に寄り添う”マーケティングの極意

2018年5月14日~16日にかけて開催した、アドバタイジングウィーク・アジアでの「LINE Meet-up Lounge」。開催2日目となる5月15日には、花王株式会社様をお招きしてトークセッションを行い、デジタル広告の特徴と顧客のライフスタイルの変化、新商品発売時の新たな挑戦についてお話し頂きました。

登壇者:
花王株式会社 マーケティング開発部門 デジタルマーケティング部 部長 鈴木愛子氏(写真右)
LINE株式会社 執行役員 葉村真樹(写真左)

異色の経歴、デジタルマーケティングへの挑戦

トークセッションは、花王株式会社(以下、花王)の鈴木氏の経歴紹介からスタートしました。元々コピーライターとして花王に入社した鈴木氏は、商品コンセプトの立案から、商品に記載するコピーや説明文をブランド担当者と練り上げて、広告の企画・制作までを展開する役割を担ってきたそうです。その後ブランドマネジャーとしてヘアケアを担当し、現在はデジタルマーケティング部の部長に就任されています。花王でクリエイティブ職からブランドマネジャーへと異動したのは鈴木氏で2人目だといい、社内でも珍しい経歴だと明かしました。

そんな鈴木氏ですが、デジタルマーケティングの領域の担当と言われた当初は、戸惑いがあったと語っています。
「デジタルというとテクノロジーの印象が強かったので、無理でしょ…と思いました。でも、これまで、自分が手がけたコピーやコンセプトがお客様にとってどう受け取られたのかを知るためにグループインタビューを行うなど直接お客様へ聞きに行っていました。それがデジタルになるとある種もっと効率的に分かるようになるのかなとは思いました」(鈴木氏)

デジタルではいかにお客様と接触するかが重要

トークセッション中盤、話はプロモーションにおけるマス広告の存在に移ります。葉村は、テレビCMがかつてトイレタイムと呼ばれていたことを指摘。さらに、インターネットやスマートフォンの普及に伴って、花王のようなメーカーであってもマス広告は以前ほど重視しなくなっているのではないか、と話を向けて、ペイドメディアに対する鈴木氏の見解を問いました。

これに対して鈴木氏は、花王もデジタル広告を増やしていることを明かしました。その大きな理由は「お客様のメディア接触の仕方が変わってきたから」だと鈴木氏は続けます。2014年の時点では、デジタル広告よりもテレビ広告への出稿量が多かったそうですが、その頃から顧客とのコミュニケーション手段の一つとして、デジタル広告を考えていたとのこと。その変化について、鈴木氏は次のように説明します。
「デジタル広告の出稿は増えてきています。お客様が変わってきていることを社内でも感じてきている流れもありますね。今のお客様はおそらくテレビの前にいることは少ないし、いてもそんなに集中して見ていないと思います。お客様が変わったのだから、私たちも変わらないといけないと思っています」(鈴木氏)

葉村は次に、花王におけるデジタル広告の特徴と位置付けという二つの質問を投げかけました。
デジタル広告の大きな特徴の一つを「効率的にお客様の反応を知ることができること」と考える鈴木氏。その一方で、「デジタルでは数字を見ることができるものの、その数字が表すお客様の反応の理由は企業側で考えないといけない」と、注意点を挙げました。たとえば、自社サイトを訪れた顧客の流れが止まった箇所と数字については見ることができるが、どうしてその箇所で流れが止まったのかを理解するには、本来は顧客に聞いてみないと分からないということです。「お客様本人ですら無意識に購買までの動きを止めていることもあるので、なぜそう反応したのか、そしてコミュニケーションの方法を変えるのか、内容を変えるのかを考えないといけない」とした上で、デジタル活用の真の目的は「お客様をより深く理解して、マーケティングの精度を高めること」と述べました。

新商品販売でデジタルシフトへ -デジタルでお客様に寄り添ったブランド戦略-

昨年秋、花王はヘアケアブランド「PYUAN(ピュアン)」から「水曜日のPYUAN」という数量限定の新商品を発売しました。同商品のコンセプトは、週の真ん中の水曜日、モヤモヤやゴタゴタを抱える働く女性に、クレンズケアシャンプーと清潔感が続くコンディショナーを使ってもらって、ふっと息抜きしてほしいというものです。
花王は従来、機能ベースでの商品の打ち出しをしているとのことですが、同商品の発売の際には「あなたのライフスタイルに合うのはこの商品です」という打ち出し方に変えたと言います。打ち出し方の変更に伴い、ブランドロゴの制作も変更を加えたと鈴木氏は語ります。具体的には、「1ブランドに対して1つの統一したロゴを作るのではなく、バリアント毎にパッケージを変え、お客様に好きな組み合わせを選んでもらえるようにした」と言います。

PYUANのブランドサイト

また、発売に際して通常はテレビ広告を打ちますが、同商品に関しては「デジタル広告のみで展開した」と明かします。ブランド担当者が社内説得を頑張った事もあり、「商品のターゲットとしている層には喜んでもらえた」と手応えを感じたそう。「お客様が受け入れてくださる限り、デジタル中心でいくでしょう」と自信を覗かせます。これに対して葉村は、「マーケティングだけでなくブランディング全体がデジタル的なものになっている」とコメントを付け加えました。
このような新しい施策が実現したことについて、鈴木氏は「ある程度届けたい層に確実にメッセージを届けられることが可能になってきているから」だと語ります。

今後もデジタルを活用したプロモーションに注力

トークセッション終盤、これからのマーケティング施策について、LINEの活用方法に話が及びました。鈴木氏が考えるLINEの強みは「ターゲティング精度が高く、届けたい層に確実にメッセージを届けられるところ」だと語ります。一方で、個々のユーザーの興味関心に合ったクリエイティブの使い分けがハードルになり、なかなか手を出せなかったという事情も明かしました。今後については「今までLINEを活用できなかったブランドでも活用していきたい」と話しました。
最後に鈴木氏は「デジタル広告はテクノロジーから入るのではなく、お客様とどういう接点を作りたいのか、どう導きたいのかという目的ありきで始めることが最も重要です」と話し、トークセッションを締めくくりました。

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